
飛騨の匠で全国に知られる高山の木の文化。より良い技術を持つ職人の街だが、それゆえの矛盾も多いのだという。岩垣さんが名古屋の建築会社からUターンで飛騨にもどり、家業の工務店を継いだのは17年前。
「飛騨に戻って驚いたのは、家を建てるのもどんぶり勘定だということでした。職人が強く、任せておけば大丈夫という風習だったんですね。価格も職人が決め、どこに頼んでも大体同じ価格、というのにも驚きました。それをなんとか打開して、ローコストで良い家を提供したい、と取組みを始めたんです。」
家を建てるのに掛かるコストは、材料はもちろんだが、人件費も大きい。
「職人さんに仕入れを見直してもらうことからスタートしました。工期もロスが無いように、現場をスムーズに運ぶよう管理を徹底し、それに伴って技術的な向上を目指しました。工務店として40年以上、職人さんの腕に支えられた技術力があったからこそ、出来たのだと思います。」
またキッチンやバスルームといった設備機器も、メーカー直接仕入れを行い価格を大幅カットした。これにより坪単価で30万円を切るローコスト住宅が実現したのだ。
「3年前には『クリアホーム』という別部門をスタートし、ローコスト住宅ながら4つのタイプを設け、性能、内容ともにこだわった家造りに取組んでいます。ローコストというと価格面だけに目がいきがちですが、安いだけでは長く続きません。日本の住宅は30年の寿命と言われますが、建てるからにはもっと長く住んでいただける家にしたい。構造面でも、性能面でも、また使う材料においても、一定のレベルは超えていると自負しています。」
また、クリアホームの良さを知っていただきたいと、モデルハウス代わりに建売り住宅にも取組みはじめたところ、見学会でも好評で即売してしまう人気だ。
「安くて良いものを、お客様に提供していきたいのです。いまはお客様のニーズも多岐にわたり、見えにくい時代です。ひとり一人のお客様に満足いただける仕事をしていれば、きっと結果はついてくると取組んできました。こうした考えを理解してくれる職人さん達にも支えられ、またアイデアを出す時は社員全員と、また時には業者さんも交えて常に考えていますね。いろんな形を提案できるように、自分達でだけでは限界があるものも、みんなで力を出し合うことで良いものを造ろうという姿勢を続けています。」
また従来の岩垣工務店としては、古民家の移築を手掛けてもいる。現在は築200年以上という金沢の古民家を、1年以上掛けて高山に移築しており年内には完成の見込みだ。
「25年前から古民家の移築をしていますが、ローコスト住宅を実現する一方でも、昔ながらの工法や技術を残していかなければならないと感じています。若い人が建築現場に少なくなってきていますが、できる職人を育てるのも、私達の仕事だと思います。」
伝統と革新は、対極にあるとみられがちだが、本物の技術に支えられてこそ革新があるのかも知れない。そして育成もまた革新であるのだろう。
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