人生90年という時代を迎えた今、60歳で定年を迎えた後も、人生は30年近く残っていると言われ、ハッピーリタイアという定年後の人生を豊かに、充実して愉しむ方法に注目が集まっている。
青木さんがトヨタの系列会社である愛知製鋼株式会社を定年退職し、故郷の飛騨に帰ったのが4年前。
第二の人生を充実して過ごすために、旧清見村に3,000坪の山と山小屋を購入した。
「これから過ごす自分の時間とは『自分のやりたいことを主体的にこなしている時間』の事だと考え、趣味のレコード鑑賞と日曜大工に明け暮れる日々を1年間おくっていました。
今考えるとネクラな仙人暮らしのようなものです。」
40年近くのサラリーマン生活の中で、会社と取引先だけが自分の交流の全てだったと青木さん。
知らず知らずに溜まっていたストレスからか、それは人間関係からの逃避だったと振り返る。
「そんな中、近所の別荘に住む山の仲間たちとの出会いがあったんです。
これまでのようなしがらみに捕われることなく、自分とは全く違う人生を歩かれた方々との出会いは、とても新鮮で学ぶことが多かったですね。
2年目を迎える頃から、趣味のカラオケ教室に出かけたり、飲みに出かけたりと1/2、俗世界へと復帰を果たし、あちこちに友達も出来ました。」
リタイア後の自分の人生設計に、ボランティア活動も考えていた青木さんは、会社員時代に東海地区の幹事長を勤めた「QCサークル」の飛騨地区ブロックの世話人も引き受けた。
「QCサークル」とは、1962年にスタートした企業の現場で働く人々が、製品やサービス、仕事の質の管理や改善をグループを作って検討する職場活性化の活動である。
現場のスタッフが実務レベルで改善を考えることはボトムアップにつながり、その成果を共有しようと発表の場を設けている。
高山でも年2回開催され、その世話役をボランティアで引き受けた。
「知識というのはいくらあっても役に立たないものです。
大切なのは知恵なのです。現場にはそういう知恵がいくらでも転がっているもので、それがひいては改善改革につながっていく。
どうせ暇なのだからお役に立ちたいと腰をあげました。」
さらに経験を活かして、中部品質管理協会のセミナー講師の仕事も引き受け活躍される。
「自分の好きな言葉に、あいだみつおの『生きているうち、働けるうち、日の暮れぬうち』という言葉があります。
あまり先の事は考えず、今日1日できることをしようと思っていますね。」
自分のための楽しみと、人と関わり、喜ばれる充実感。そのどちらが欠けても、人生は味気ないものになってしまう。
人と人との出会いの中から学ぶことは、人生を豊かにしてくれるものなのだ。
|