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花兆庵 有巣さん

本陣平野屋 花兆庵
女将
有巣 栄里子さん

本陣平野屋花兆庵

本陣平野屋花兆庵
本陣平野屋 花兆庵
岐阜県高山市
本町1丁目34番地
TEL
 0577−34−1234(代)
FAX
0577−34−7721
ホームページ

旅館の女将という仕事は、女性の職業の中でもっとも多忙で、もっともやりがいのある仕事なのではないだろうか?
接客のプロフェッショナルでありながら、経営者である女将業は、女性の総合職の元祖と言えるのかも知れない。
平野屋別館と花兆庵の女将、有巣さんは小柄な可愛らしさとその穏やかな話し方が魅力的な方だ。

「私は飛騨生まれの飛騨育ち、高山の街が大好きなんですね。
高山ほど観光リピーターの多い町は他では見当たらないのではないでしょうか?
花兆庵もオープンして10年、有難いことにリピーターのお客様も増えて来ました。
そんなお客様に感謝の気持ちを込めて、また来て頂いたお客様にのんびり寛いでいただくためにお風呂造りに取り組んだんです。」

まずは今年1月、平野屋別館に隣接した町家とその蔵を改築した女性専用の温泉リラクゼーションルーム「りらっくす蔵」がオープンした。

「明治時代の町家だったのですが、これまでは夏、お客様に選べる浴衣の展示をしたり、お雛様の展示や中村久子さんをテーマにした会などを開催していたんですね。
その時、お客様からおばぁちゃんの家の様でほっとする、壊してしまうのは勿体無いとおっしゃっていただきまして…。
この建物を活かしてお客様に喜んでいただくのが私の使命のように感じたんです。」

旧き良き高山そのままの民家、ここが温泉になろうとは、誰が想像しただろうか?

「母屋はほとんどそのまま生かそうと思い、温泉を作るならひとつだけ、蔵を温泉にして女性専用にしようと考えました。
ですが、工務店の方からは反対されましたね。
蔵は土のもの、水である温泉とは合いまみえないから、責任は持てないと言われたんです。
設計は花兆庵と同じ石川雅英先生にお願いし、それからが大変でしたね。
資料も設計図も残っていないので、現場で採寸しながらの作業が多く、蔵のお風呂も徹底的な配慮で実現しました。」

蔵の中の温泉は、開放的な中庭に面し、お風呂になった蔵の床板は、囲炉裏のベンチに生まれ変わり、和室にはソファと本棚、リフレクソロジーやハンドマッサージが受けられるサロン…。
和風モダンな表情も取り入れ、洗面所に置かれたガラスの洗面器はそれぞれ異なったデザインと下からの照明でほんのり光り、デンマーク製の照明やベランダのチェアまで、有巣さんが楽しんで作り上げた様子が伝わってくる。
残念ながらお風呂だけの利用はできないが、宿泊客の、それも大人の女性だけが、ゆったりと寛げる空間なのだ。

「私は数字を見るのが苦手なんです(笑)。調度を選ぶのにも、お客様がどんな顔で喜んでいただけるか想像すると絶対にコレしかないと思い込んでしまって。」

女性だけの空間だが、男性には別館に展望露天風呂『りらっくす満天』がこの春完成した。

「高山にきたらほっとするよと、お客様に言って頂けたらいいですね。
私は飛騨人ですから、歴史や学問も大切ですが、もっと身近な飛騨高山のことを知ってもらいたくて、飛騨人とふれあうツアーを組んでお客様と出かけたりします。
原田酒造の専務さんや千光寺の大下大圓さんとのお話を楽しんでいただいたり、打保屋さんで駄菓子作りの見学をしたり。
そんな飛騨の人と土地のあったかさを感じていただけたらと、季節毎に発行している「おかみたより」も30号を超えました。」

おかみたよりには、高山の風物や、地元ではあたりまえの慣習などが、有巣さんの感じたまま綴られ、その優しい視点と、思わぬ行動力によるちょっとした冒険記のようでもあり、回を重ねる毎好評だ。
お客様に喜んでいただきたい、楽しんでいただきたい、そんな女性らしい思いやりとそれを軽やかに楽しむ術、女将業はやはり女性のサービス業の頂点である。