
窓からこぼれる温かい灯。扉をあければ小さなお店にパリ下町の雰囲気がほっと和めるル・ミディ。ランチを840円で出しているこの店のシェフは、実はフランスの3ツ星レストランや街のビストロで働いていた人だったという個性溢れるレストランだ。この店でサービスにつとめるのが田上麻佐子さん。3年前にこの店を始めるまで、サービスの仕事とはまったく無縁だった。
「最初はこんな店にしたい、という理想も持ってスタートしましたが、最近は『お店はお客様が育てるもの』だと改めて実感しています。思わぬ発見や出会いがあり、本当に良い人達に支えられて3年が過ぎましたね。」
窓に貼られたメッセージには、寒いなかを訪れてくれるお客様を、麻佐子さんの感謝の言葉がさり気なく迎えてくれる。
「ワインもフランス料理も何もわからないままのスタートでしたが、逆に何も知らないからこそ、お客様に肩の力を抜いて楽しんで頂けたのかも知れませんね。シェフが本当に美味しい料理を作ってくれる、安心してお客様にサービスできたのかも知れません。素人の目から、お店を客観的に見ることができ、お客様の立場にたって、シェフの料理をわかりやすく説明するなど自然に心掛けてきました。」
お店のお客様は8割が女性、サービスも素直に気持ちをくみとってお応えしたいのだと言う。
お客様と料理人、そしてサービスを受け持つ麻佐子さんが、お互いの顔を見ながらコミュニケートし、タイミングよく料理が運ばれてくるのもこのお店の魅力の一つだ。
「小さなお店だから、例えばお誕生日や結婚記念日のお祝いに訪れた方を、他のテーブルのお客様も一緒になってお祝いして下さったり、お客様同士も親密な空間になるようです。私自身もパリの小さなビストロで、隣のテーブルの老夫婦からワインをいただいた思い出があるんです。過剰なサービスではなく、お客様が楽しんで過ごしていただくために、精一杯自分のできることを今も模索中です。」
気どった店ではなく、ビストロの料理を出すこの店に「レストラン」とつけたのは、「レ・スト」すなわちストレスを抜く場所であって欲しいという願いもこもっているそう。
「仕事をして逆にお客様から『ありがとう』とおっしゃっていただけるんです。これははじめての経験でした。私達もお客様から元気をいただいているのかも知れませんね。本当に素直にこころから『ありがとうございます』と言える毎日です。」
小さなお店はできることに限りがあるかも知れない。だからこそ、自分達の仕事をしっかり見つめ、お客様と向き合っていけるのかもしれない。限られた12席に座れるお客様だけが、この時間と料理をライブ感とともに楽しんでいるのだ。
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