高山市内の国分寺山門の正面にある中華料理の店、平安楽の店内は骨董品があちこちに飾られている。ガラスケースには、昔のお弁当箱、くし、古銭。壁には3メートル近くある鉄製のやり、火消し棒などが飾られ、調理場の棚には花びんや壷が数十個並べてある。
昔、この店の前の国分寺で骨董市が開かれており、先代の古田敦さんが休憩時間に行き、少しずつ集めたものだという。「父は骨董よりも、オークションでせり落とす雰囲気が好きだったのかもしれんな」息子の洋さんが幼少の頃(昭和40年代初め)市内各所で骨董市が開かれ、父に連れられて行った記憶を語ってくれる。ちょっとした陶器の壷は当時のたばこ銭で買えたらしい。
店内をじっくり見回すと薄暗い天井近くには、龍に似ているが象のように鼻が長い想像上の動物である木彫りのバクや狛犬が、黒光りする柱に組み込まれている。それらの守り神に見守られ、店主の洋さんは口数少なく料理を作る。奥さんの直子さんは愛想よく客の接待をする。二人は2年ほど前から年に一度、南の島への旅行でスキューバーダイビングを始めたという。それは海の中でパートナーの信頼が大切なスポーツと聞く。飾られている木彫りのバクや狛犬はどれも二匹で一対となっており、古田さん夫婦もどちらも欠けることのできない一対の像に置き換えてみたくなる夫婦だ。
中華料理店ではあるが、一般的な中国的装飾品にはこだわらず、自分の目で選んだ骨董品を店内に粋に飾った今は亡き先代の敦さん。戦争で派遣された中国の地で、また戦後、本格的に中華料理を教わったという青森で、どこへ行っても自分自身のゆるぎない根っ子を持っていた人。そんな想像が膨らんできた。
ひとつひとつが物語りを秘めている骨董品に囲まれながら、ここで中華料理を味わってみませんか。あなたの記憶に眠る物語が動き出すかもしれませんよ。